ドキュメンタリー映画「日本一幸せな従業員をつくる!-ホテルアソシア名古屋ターミナルの挑戦」を見た。ホテルは名古屋駅前再開発ため平成22年9月末で36年の歴史を閉じた。映画は、ホテル最後の10年間を総支配人(GM)として勤務した柴田秋雄さんと、ホテルの正社員、嘱託社員、アルバイトたち総勢200人近い人の、閉店10日前の姿と、閉店当日の様子を映し出す。

映画の発端は、柴田総支配人(GM)という素敵な人がいると聞いて、映画スタッフ数人がことのついでに会いに行ったことから始まる。スタッフがたまたま柴田GMへのプレゼント用にと撮った映像の中で、柴田さんは従業員の自慢ばかりしながらホテルを案内して回る。コーヒーでもてなしながら話をする。社員食堂のごはんを一緒に食べ、本や書類がうずたかく詰まれたGMの席を案内して回る。

コーヒータイムでは、喫茶コーナーで接客する耳の聞こえない若い女性が、一人ひとりにカップを差し出した。喫茶では、お客さんの言葉がよく聞き取れない。時間がかかる。しかしスタッフはその女性が仕事をやりきるまで、待って、見守る。「障害があるからできなくて当たり前」のように言われ続けてきた女性は、自分が初めて一人前に扱ってもらえたと喜びスピーチをした。たどたどしい言葉。しかし表情にはあふれるばかりの喜びと自信が輝き出ていた。

試写の後、柴田さんは岩崎監督とのトークライブで、GMに就任した当初、社員食堂に入って、訪れる社員が少なかったことを話した。

食堂のまかない担当者に聞いた。社員がたくさん食べると経費がかかるからあまりおいしく作るなといわれているという。柴田さんは、まかない担当の3人に食堂委託会社を辞めてホテルの社員になってもらった。「あんたら食べ物作る職人だろうが。職人ならちゃんとした道具を使わにゃ」と、使っていた合成樹脂のまな板とステンレスの包丁に替えて、幅1メートル厚さ10センチほどのヒノキのまな板と、刃物で有名な岐阜県関市の1本10万円もする刺身包丁など数本をプレゼントした。おいしくなった食事に、訪れる従業員が増え社内コミュニケーションが活発になっていった。

失敗した社員を責めない。社員のいいところを上司に見つけ出してもらって月1回、柴田GMから「ありがとう賞」を贈る。社員の誕生会をして一緒に語り合い喜び合う。入社試験は自分がGMになってから筆記試験をしたことがない。30分の面接だけ。

うつ病になって心が壊れてしまった社員のために、農場の一角を借りて、土いじりをする。作物を育て、土に親しむ数ヵ月。何を言われてもうつむいて黙っていた社員が、すこし顔を上げ、手を振ってサインを出すようになる。柴田さんは「何も言えんかった子がこうして手を振る。もう、それで精いっぱいなんよ。それを、しっかり受け止めんと」と言葉に力を込めた。

名古屋のホテル業界で最高額のボーナスを出したときは、ほかのホテルに行って、自慢して来いと明るく励ました。頑張ったら報われる。従業員は働くことが楽しくなった。

4期連続赤字だったホテルは7期連続黒字となり、年間稼働率90数%も達成。お客さんから「日本にこんなあったかいホテルがあるなんて、まるで家族のように接してくれる」と喜ばれ、出入り業者からは「従業員さんがトマト運びを手伝ってくれて」と感激される。

この営業成績の好転を、柴田総支配人と従業員の頑張りとだけ見てはいけない。出入り業者、お客さんへの信用の蓄積と見るのも、まだ不十分だ。柴田さんの大きな願いに気づかなければいけない。

この平成の時代。障がい者を差別し、従業員を使い捨てにする社会へのアンチテーゼとして、柴田GMは「人と大切にし、人が喜び、人の真心が人に響いて従業員も家族もお客様もココに来てよかった、ココで働いてよかった、ココに納品してよかったと心から喜べるコミュニテリーをつくりたい。未来への希望のタネをまきたい」と願ったのではないか。

それを、弁舌ではなく、笑顔と真心からの実践として日々目の前で見せていったのではないか。

生き苦しい世の中。しかし、人間が真心を尽くして一生懸命生き、笑顔いっぱいに工夫をこらすとき、笑顔と工夫をこらす人々の輪が生まれ、響き合って、人も自分も喜べる世界が生まれてくる。

このホテルの日々を「私たちの学校です」と振り返った従業員がいた。柴田GMは閉店前夜、全従業員一人一人に「卒業証書」を手渡した。最後の一人に渡して降壇する柴田GM。そこに「もう一人卒業生がおります」のアナウンス。柴田GMは呼び止められる。全従業員から、真心の渦を作り出したGM(総支配人)への感謝の「卒業証書」が手渡された。

この真心あふれる映画、様々な地域で、この映画に感動した人たちの手で自主上映会が開催される。

http://www.heartofmiracle.net/hotnews/hotnews0012013.html

多くの人が映画と柴田秋雄さんからたくさんの元気をもらい、生き苦しい世の中を明るく笑顔のあふれる職場、家庭、学校、サークルにすることが願われている。

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