京都の中心部、四条烏丸から少し西に行った四条通沿いのビル6階。オフィスの壁に、京セラ名誉会長稲盛和夫さんの日めくり箴言集が掛けられている。デスクの前に座ると大きな文字が働く人の目にドンと飛び込む。

社長は毎週、稲盛さんが経営理念を紹介した本『京セラフィロソフィ』をとっかかりにして、経営についての自分の想いをメールに綴って、従業員に発信している。従業員も『京セラフィロソフィ』の項目を一つ読んで、その感想を社長たちにメールで送っている。

メールの内容は、働くことの本質、自分の働き方、失敗の対処の仕方、経営への思いなどいろいろだ。

10月6日の日めくりは「感性的な悩みをしない」と示していた。小さな活字でその意義をこんなふうに説明している。

人生には失敗することもある。失敗したら、理詰めで原因をとことん考え、しっかり反省する。反省した後はもうくよくよ考えない。反省をベースにして、二度と失敗しないように一生懸命努力をする。ああでもないこうでもないと感性的に悩んだところで、何の改善も実現しない。悩む時間があったら、反省を生かして具体的行動を一つでも取ることが重要だ、という趣旨になるだろうか。

『京セラフィロソフィ』に同様の記述がないか? 「感性的な悩み」という言葉が出てきそうなページを繰ってみた。見つからない。すると、面白いタイトルが目に飛び込んできた。見出しは「神様、ごめん」「神様、ありがとう」。へえ、稲盛さんは禅のお坊さんのはずなのに、神様を信じているの? と思って活字を追ってみた。こんなエピソードが書いてあった。

稲盛さんは若いころから、毎朝洗面をする時に反省を行ってきたという。経営者として成功して稲盛さんに私淑する若手経営者の会「盛和塾」の塾長になっても、いっぱい飲んで帰った夜、寝ようとする時にも反省しているようだ。

その反省とは、「神様、ごめん」と口に出して言うことだという。ちょっと威張ったような偉そうなことを言った日など、家やホテルに戻ると、すぐ「神様、ごめん」が口をついて出ると言う。それが「神様、ありがとう」になる日もある。

なぜ「ありがとう」か。悪いことをしたと、気づかせてくれてありがとう、という意味の「ありがとう」なのだそうだ。

筆を進めて、「反省を繰り返し、常に心を純粋にしていなければ、すばらしい考え方、すばらしい人格、すばらしい人間性、そういうものを維持していくことは不可能です」「心を純粋にして、自分の行動を善の方向へ向けていくためにも、『反省』は欠かせないものなのです」と念を押す。

反省には、仕事や研究の推進の上での反省だけでなく、自分の人間性についてもしっかり反省するまなざしが必要だと強調している。

日めくり『稲盛和夫箴言集』と『京セラフィロソフィ』をリンクさせて読むと、ビジネス面での成長だけでなく人間的成長についても気づかせてもらえることが多い。

しかし気づくだけで実行しなければ「反省した」ことにはならない。一生懸命取り組むしかないのだということ。これも日めくりと本の読み比べの中から教わった。

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