新年度を迎え、四条烏丸にあるepiのオフィスでは「働いて幸せになる人を一人でも多く増やす」というビジョンを確認しました。
会社はこの春起業満30年。「人も組織も幸せを創る」という目的をイメージする言葉を共有しました。

世間一般には、会社や仕事というと、「儲けてなんぼ」「仕事はしんどいもの」といったイメージがつきまといがち。

しかし、この会社は「利益最優先ではなく、働く人が楽しく働いた結果事業の成績がアップする」「働いて幸せになる人が多く増えた」という会社や組織を、いくつもこの日本で誕生させてきています。

「働いて幸せになる人を一人でも多く増やす」の中の、この「幸せ」とは、会社の業績アップという収益、働いている人の賃金向上はもちろん、働くことによる人生の充実感、社員や地域や社会に貢献できたという満足感のすべてを含んでいます。

こうした物心両面にわたる〈幸福感〉を、一人でも多くの社長さん、従業員さんに手に入れてもらうのが、この会社の大きな願いなのです。

思うだけでは、物事は実現しません。

願いを成就させるには、成就に向けた工夫と働きが必要です。この会社では、「会社や組織が繁栄して、お客さん、取引先、従業員にもっともっと喜んでもらいたい」と願っている経営者さんのご理解と発注を受けて、まず、社長さんや幹部さん従業員さんの「こういう会社にしたい」「こんだけ儲けたい」「この課題をクリアしたい」「もっと楽しく働きたい」「こんなことがつらい」といった率直な声に耳を傾け、そうした思いや願いの根っこにあるそれぞれの人の「本当はこうなりたい」といった心の奥の声を掘り出します。

それぞれの人が、自分の本音と会社や自分を取り巻く現実とのギャップに気づくことが、「人も組織も幸せを創る」ための第一歩となるのです。

その気づきを土台として、それぞれの人に、自分は「人も組織も幸せ」の実現に向かって、具体的にどういう行動を選び取って、どう実践していくことが喜びになるのかを考え、お互いのコミュニケーションを深めながら、多くの人と共に自分や組織の改善計画、行動作戦を練っていきます。

この会社は、販売促進、マーケティングのノウハウがあるので、作戦づくりに当たり、一人一人が心をこめて想いを実現すれば、きちんと利益につながるような考え方を提供します。

この作戦づくりで大切なのは、人のアイデアを批判したり、自他を比べたりしないことです。「私もほかの人も一人ひとりが生き生きと働けて、お客さんが満足し、会社も繁盛する〈幸福〉な組織の実現」という大目標に合致してさえいたら何でもやってみようと、ポジティブに進行していくことが重要なのです。お互いの発言でお互いの思いを殺し合ってはいけません。

作戦作りのステージで培った、前向きの心、自分から進んで前に進もうという気持ちが、より大きな満足感達成へと、一人ひとりによりポジティブな行動を選択させることにつながっていくのです。そのようにして出来上がった作戦は、誰かから押し付けられた作戦ではありません。会社や組織を構成する一人ひとりの思いの投入された、心のいっぱい詰まった作戦なのです。

作戦づくりのステージごとに、互いのわだかまりや遠慮が消えて、参加者の積極性が増してきます。多くのアイデアが生かされるだけでなく、苦情へのすばやい改善対応ができるなど、行動面での変化も表れてきます。

さまざまな企業や組織にありがちな、お互いの足を引っ張ったり、失敗を恐れて消極的になる風土、気風が一変して、お互いに支え合い、前向きにチャレンジする社風、気風が育ってくるのです。中、企業や組織は、日に日に活性化していきます。
このようにだんだんと「人も組織も幸せ」を創れるようになってきた時に、怖い落とし穴があります。油断をしてはいけません。

担当のトレーナーは、ここで一つの問いを経営者さんや従業員さんに投げかけます。心の奥底のどこかで、「仕事は苦労しないといけない」とか「楽して営業実績がアップするのはおかしいんと違うか」などと思っていませんか?

実は、「苦労しなければ本当でない」とか「楽して儲けたらいけない」とかいった既成観念こそ、「幸福大作戦」にブレーキをかける要素なのです。

ブレーキは、心の奥に蓄積された経験知や長年の習慣がかけさせるのです。こうしたストレスに気づいて、自分の脳が喜び、他人と一緒に活発に働いて、物事が大きく成就する道に踏み出していったらいいのです。「仕事は楽しいのが一番」「楽に儲けられるのは、この手法が人間の脳の基本的な動き方、良いものを喜ぶ脳の作用に即しているから、当然だ」と思って、「予想外の成果」を素直に喜んだらいいのです。

こういうとき、大切なのは、「人も組織も幸せを創造する」大作戦で高まった一人ひとりのモチベーションを大切にして、幸福へのブレーキとなる知識やストレスに押し戻されることなく実践と実行を重ね、ブレずに当初のモチベーションを高め続ける人たちこそ、人も組織も物心両面で「働いて幸せになる世界」を手に入れることができるのです。

 この会社の取り組みは、絵空事ではありません。

一人ひとりが幸せになり会社も組織も楽しく繁盛する作戦の詳細と、キーポイントをもっと詳しく知りたい方は、次の本をご一読ください。

米国の精神科医ウィリアム・グラッサー博士が著した「選択理論心理学」という本です。分厚い本ですが、読み進めるうちに、この〈人と組織の幸福大作戦〉が、誰でもが実践できることであり、人間の脳の働きの理論と数々の成功に裏付けられたものであることを、感じていただけるかと思います。

 「1日 朝起きから始まる」。朝礼で輪読する「職場の教養」の発行団体、一般社団法人倫理研究所発行だ。小さな字で「目が覚めるのは、行動を起こす大切な気づき。朝を活かせば、一日がスムーズに進んでいく。」と補足している。

その隣にかかるのが、日めくり「稲盛和夫箴言集」だ。「1 新しい計画を実現する」とある。

積極思想を説いた哲人、中村天風さんの言葉「新しき計画の成就は、ただ不屈不撓の一心にあり。さらばひたむきにただ想え。気高く強くただ一筋に」を引いて、稲盛和夫さんは、強烈に思い描き続けることでどんな難しい目標であろうと必ず達成できると説く。思いが気高く純粋で一筋であるほど最大のパワーが発揮できるのだと励ます。

稲盛さんの経営思想と人間観、世界観を集約した本「京セラフィロソフィ」を繰って「新しい計画」に対応する箇所を探す。48「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」が目に入った。

ここで稲盛さんは面白い説明を展開する。新しいことを思いついたらまずめちゃくちゃポジティブなゴマすり社員に話して感想を聞く。そういう社員は必ず「いいです。社長、やりましょう」と後押しをしてくれる。気をよくして、実際の行動計画を練る。

そのときは頭の切れる、慎重な社員に意見を求めて実効性の高い計画に練り上げる。

そして実行段階に移ったら、腹をくくって、あくまで未来を楽観して一心に突き進むのだという。

天風さんが言う「気高く強く一筋に」が実現するよう、場面場面で部下の特性を上手に使い、物事を着実に前進させている。

小さな心配から意欲がくじけたりしないように、がさつな計画で舞い上がって失敗しないように、どんな困難があっても目標と本質を見失わないように、自らを戒め心がけている。これは、稲盛さんが、自分の利点と限界を良く知って、その限界を超える手立てを日々の出来事の中から獲得してきた結果であろう。

ポジティブ指向、積極思考、前向きに、という言葉は、経営だけでなく、昨今の処世訓のトップにありそうな「生き方」になっている。朝、「さあ、今日もがんばろう」という自分への元気な声掛けではじまり、これをこうしてとポジティブに組み立てる現場想定のイメージトレーニングに続いていき、明るく前向きな営業活動、執務姿勢という実現形となって1日が動いていく。

「心一つですべてを創る」と言った宗教家がいる。「心一つですべてをこわすことにもなりかねません」とも念押しした。喜びを伴った笑顔、相手の繁盛を思いやるやさしさ、一緒に繁盛しようとするひたむきながんばり、この「心一つ」がすべての豊かさにつながっている。

 2015年1月、京都。組織変革を支援する会社の年初ミーティングで社長、社員、パートがそれぞれ今年の抱負を述べた。
 社長は、新春、沖縄で参加したスーパーカリスマバスガイドのツアーでの体験と、そこで再確認した自分の「原点」について話した。

 世の中のお役に立つことは自分の天命だと思うとして、「起きてくることを受け止めて取り組みたい」と話した。

 社長の言う「原点」とは、沖縄戦のさなか、避難した防空壕(洞窟、ガマ)の中で、赤ん坊が泣くと米軍に見つかってしまう恐れがあることから子供の息を止めざるを得なかった母親。
 捕虜になってひどい目にあうくらいならと、わが娘を思うがゆえに娘に手をかけたという。

 わが子を死なせたくはない。しかし、絶対に捕虜になってはいけないという教育の中、わが子をひどい目にあわしたくないという想い、兵隊や周囲の目、戦争という状況の中でわが子の息を止めざるを得なかった母親。

 社長は、かなり前に小冊子でこの話と出合い、戦争という環境の中で人が人として生きられない悲しさに胸を打たれた。「人が争わなくてもいい世界にしたい」と強く思った。

 戦争だけでなく、今の社会にある〝人がその人らしく生きられない状況〟を少しでも減らして、人がイキイキと生きていける世界、働いて幸せになれる”場”づくりを自分の天命にしよう、と強く思ったのだという。思いは形になり、起業30年を迎える。

 スーパーカリスマバスガイドの崎原真弓さんを、社長が間近で見つめた沖縄ツアーは、ガイドの崎原さんが防空壕の中で赤ん坊を死なしてしまった母親を再現。真に迫った語りで参加した経営者たちの心を揺さぶったという。沖縄県立平和祈念資料館で見た資料は、日常の報道では見られない恐ろしい映像を映していた。

 「人が人を傷つけない世の中にしたい」社長は涙の中で「ここが私の原点だったのだ」、と改めて思い起こした。
 
 天命を社長が再確認し、会社の原点を思い起こした2015年。組織変革を支援する会社は、一層の天命実現にむけて、メンバーそれぞれが力を磨き、実績を向上させて、新たに教育漫画や書籍の出版、ブログの発信などにも大きく展開していきたいと意欲を燃やす。

ミーティングの日、1月19日オフィスの壁では、京セラ名誉会長の稲盛和夫さんの日めくり「箴言集」が成り行きを見守っていた。記された言葉は「宇宙の意志と調和する」だった。

「『宇宙の意志』と調和する心」は、稲盛さんの本「京セラフィロソフィ」の第二章〝すばらしい人生をおくるために〟の冒頭にある言葉だ。そこで稲盛さんは、「この世には、すべてのものを進化発展させていく流れがあります。これは『宇宙の意志』ともいうべきものです。この『宇宙の意志』は、愛と誠と調和に満ち満ちています。そして私たち一人一人の思いが発するエネルギーと、この『宇宙の意志』とが同調するのか、反発しあうのかによってその人の運命が決まってきます。

 宇宙の流れと同調し、調和するようなきれいな心で描く美しい思いを持つことによって、運命も明るくひらけていくのです。」と強調している。

 年初ミーティングは、期せずして、社長の確信した〝天命〟を、「愛と誠と調和」によって2015年の社会に大きく実現しようと願う流れになった。

 問題にぶつかったときに「まいったなあ」と弱音を吐いてしまいがちですが、そのとき自分に「よかったね」とささやいてみましょう。

 失敗や困難をそのまま喜んで受け入れて、日ごろの自分のありようを静かに振り返り、足りなかったところは実際に行動を改善してみましょう。

 声を出して自分に「よかったね」と語りかけることで、改善に取り組む勇気もわいてきます。

 といった内容のエッセーが、『職場の教養』11月号(一般社団法人倫理研究所発行)に掲載されていました。

 朝礼でこのエッセーを輪読しました。その後それぞれが述べた感想に、各人の日ごろの仕事と暮らしのありようが投影されていました。

 営業でがんばっている社員は、先輩に「困難は、自分にそれを乗り越える力があるから神様が与えてくれたものだ。大丈夫。やれる」と励まされたことを思い起こしました。その思いを持って、日々の仕事に当たっているようです。

 社長は、「プラス思考」というのは弱音を吐いてはいけないということではない。「まいったなあ」と弱音を吐くことは必ずしも悪いことではありません。ちゃんと自分の「弱った」という気持ちが受け入れられたら、「そして、次どうする?」と前向きに考えられるからです。心が本当に感じていることを無視しては次には進みにくいのです。そこで自分にプラスになるようにとらえて、前進を企画する。そうした行動を選び取っていけるようサポートすることが重要なのではないでしょうか、と、話しました。

 困難に直面した人に、「がんばれ」「君ならできる」「やれば出来る」「出来るはずだ」と激励するばかりでは、プレッシャーがますます大きくなって「こんなにがんばっているのに、もうこれ以上は無理」と意欲を減退させかねません。それではいつまでたっても「まいったなあ」は「よかったね」に変わりません。

 社長はさらに言葉をつないで、この会社が進めている、米国生まれの「選択理論心理学」とストレスマネジメントの手法を組み合わせたサポート手法がいかに有効か話しました。

 「まいったなあ」という人に寄り添って、その人の言葉に耳を傾け、気持ちと行動の奥にあるいくつかの癖に注目します。

 そして、「まいったなあ」の状態を生み出している様々な事柄の糸と気持ちの糸のこんがらかりを一つ一つほぐしていきながら、その人の気持ちの奥に眠っていた自分本来の希望や意欲、人として生きる喜び、心地よさへの気づきを促して、そうした自分自身の希望を根っこにしっかりと確認して、すっきりした気持ちで困難に取り組んでいく道を自ら選び取って、行動するようになるんです。

 作り話のように響くかもしれませんが、大きな課題や困難を抱えていた社長さんや幹部社員さん、従業員さんが、こうした手法のコーチングやワークショップを経験することによって自分本来の、人間本来の元気を取り戻し、業績をアップしていった事実はいくつもいくつもあるといいます。

 「まいったなあ」とほっと一息ついて、そして、一呼吸置いてから、自分に向かって元気なふりをして「でも、よかったね」と言ってみるのも悪くはなさそうです。

 困難があるから、課題があるから、また一つ、職業人としての実力と人間としての魅力をアップできるのです。「

 まいったなあ」の先には、「やっぱり、よかったなあ」と言える世界が待っています。あなたにはその力があります。

社長が面白いワークをしてくれた。epiのトレーナーの一人、プロジェクトアドベンチャーの一人者でもある北川剛司コーチに教えてもらったという。

社長が「前へ」と言う。私も「前へ」と言って一歩前に進む。「右へ」と言われたら、自分も「右へ」と言葉にして右へ一歩動く。同様に左や後ろへも声を出しながら動く。言われた言葉を繰り返し、その方向に足や体を動かす。言葉と足は同じ動きをする。

 動きに混乱はない。

 次に「前へ」と言われたら「後へ」と言って足を後ろ出して動く。「右へ」と言われたら「左へ」と言って足を左に出して動く。他の方角も言われた言葉と逆の方向を口に出して、自分が言った方向に足を動かす。

 指示とは異なるが、自分の言葉と動きの間には矛盾がない。これもさほど混乱しない。

 ところが、第3ステージ。「前へ」と言われたら「後へ」と言って足だけを前に一歩動かす。「右へ」と言われたら、「左へ」と言って足は右に。

 つまり、自分自身の言葉と足の動きに矛盾がある。たちまち混乱した。

 このささやかなワークは、人間の行動がいかに言葉に支配されているかを体験できるものだという。面白いワークを考えた人がいるものだ。

 人間は、脳の働きによって、行動に多くの影響を受けていることは、さまざまな研究によって明瞭になっているが、脳の中の言葉がこんなも日常動作を混乱させるものだと知ってびっくりした。

 それほどに行動に影響を与える言葉なら、自分に語りかけ、人に語りかける言葉も重々気をつけなければいけない。

 そう思って机の前にかかっている日めくり「稲盛和夫箴言集」を見たら、「『愚直に、真面目に、地道に、誠実に』働く」とあった。毎日、この言葉を自分に言い聞かせていたら、そのように行動もコントロールできていくかもしれない。

 スポーツ選手は、大事な試合の前にイメージトレーニングをして、言葉を介して行動と意欲を高めていくという。

 ビジネスマンであろうとOLであろうと、家庭人であろうと、日々、励みになる言葉、鏡になる言葉で自分自身を、よりよくイメージアップして、実際の行動もブラッシュアップしていきたいと思った。

 良い言葉、良い思いを自らに向け、人にも向けて生きたい。

 選択理論心理学を提唱した米国の精神科医ウィリアム・グラッサー博士は、人を生き生きとさせる行動「人間関係を築く7つの習慣」として次の言葉を掲げた。

傾聴する。支援する。励ます。尊敬する。信頼する。受容する。意見の違いについて交渉する。

 こうした言葉を日々、折々に自分に語りかけていったら、そうした行動が自然にとれるようになるかもしれない。

 私はグラッサー博士の7つの言葉に、さらに一つ加えたい言葉がある。「言葉に出して、すべての人や物、事柄に、心からお礼を言う」だ。

 お礼の、心からの「ありがとう」は、多くの人を生かしてくれる。いよいよ言葉の力を信じて、自他共に喜びに満ちた職場と家庭と社会を「誠実に、愚直に、倦(う)むことなく築いていきたい。

「職場の教養」(一般社団法人倫理研究所発行)の「物の上を跨(また)ぐな」を輪読。

ノコギリの上を跨ごうとした若者を、腕利きの大工さんが「こらっ!」と制止する。大工さんはとても人一倍道具を大事にし、いい仕事をすると評判なのだそうだ。大事にするから道具もそのことを分かってしっかり働いてくれたのかな-といったニュアンスだった。

輪読の後、長年使ったマイカーの話や、プロは一流の道具を使うことなど、エッセイをめぐって感想を述べ合った。高価な道具はプライドを生む、といった話も出た。

私は、「跨ぐな!」という言葉の背後に、道具に対する敬意、御礼、感謝の心が込められているような気がした。単に大事する以上の愛情や尊敬の念が感じられた。仕事の都合で床や石の上に置いたとしても、本心は三方の上に供えて神棚へでも奉っているような心持ちだったのではなかろうか。

そうした、自分に仕事をさせてくれる道具への感謝の心が、道具を大事にし、仕事を大事にし、自分の人生を大事にすることにつながって、「評判の大工さん」を生み出したのだろう。

ノコギリ一本のようで、事はノコギリにとどまらない。ノコギリに対する態度が、その人の人生の質、豊かさを暗示している。

人や物をバカにする心が強いか、大切にする心が厚いか。それは、道具が大事にしたお礼にすばらしい働きをプレゼントしてくれるといった次元の打算や思惑でなく、大切にせずにはおれない、自分の生き方が許さないといった深いところで大工さんを突き動かしていたように思えてくる。

戦前戦中戦後にわたって、のし紙や新聞チラシの裏の白い部分を切りためてメモ用紙に使っていた宗教家のエピソードを聞いたことがある。その人の息子さんも宗教家で、いろいろな悩みを抱えて訪ねてくる人に、「実意をこめてすべてを大切に」と語り続けて亡くなった。

今あることのお礼、自分の目を見えるようにしてくれているめがねにお礼を申し、見させてくれる目にお礼を申し、今ここでこういうことをさせてもらえているという、すべてのご都合にお礼をと語りつづけた。

足りない点や困った事に目を奪われるのではなく、多くの恩恵の中で生かされていてその上での心配事や病気なのだから、まず命やここまでこれたことのご都合お繰り合わせに対してお礼を申してから、お礼を土台にして助かりを願わせてもらうのが順序でしょうが、と丁寧に話した。

ノコギリを跨ぐ心、モノを軽んじる心は、人や物、仕事に軽重をつけて、軽いと思ったらその仕事を軽んじる生き方に人を導くように思える。

人間、限られた時間の中を生きている以上、できることには限りがある。しかしそれでも、誠心誠意一生懸命に実意を込めて、すべてのモノ、人、事柄を大切にする。するとその実意が人の行動をより輝かせ、多くの人に波及して、モノや人、すべての命を大事にする気づきの風を家族や職場、地域にわたらすのではなかろうか。

道具を跨いで平気な心は、人間を軽んじ、仕事を軽んじる心につながるだろう。そんな職場にはならないでほしいと、つくづく思う。

京都の中心部、四条烏丸から少し西に行った四条通沿いのビル6階。オフィスの壁に、京セラ名誉会長稲盛和夫さんの日めくり箴言集が掛けられている。デスクの前に座ると大きな文字が働く人の目にドンと飛び込む。

社長は毎週、稲盛さんが経営理念を紹介した本『京セラフィロソフィ』をとっかかりにして、経営についての自分の想いをメールに綴って、従業員に発信している。従業員も『京セラフィロソフィ』の項目を一つ読んで、その感想を社長たちにメールで送っている。

メールの内容は、働くことの本質、自分の働き方、失敗の対処の仕方、経営への思いなどいろいろだ。

10月6日の日めくりは「感性的な悩みをしない」と示していた。小さな活字でその意義をこんなふうに説明している。

人生には失敗することもある。失敗したら、理詰めで原因をとことん考え、しっかり反省する。反省した後はもうくよくよ考えない。反省をベースにして、二度と失敗しないように一生懸命努力をする。ああでもないこうでもないと感性的に悩んだところで、何の改善も実現しない。悩む時間があったら、反省を生かして具体的行動を一つでも取ることが重要だ、という趣旨になるだろうか。

『京セラフィロソフィ』に同様の記述がないか? 「感性的な悩み」という言葉が出てきそうなページを繰ってみた。見つからない。すると、面白いタイトルが目に飛び込んできた。見出しは「神様、ごめん」「神様、ありがとう」。へえ、稲盛さんは禅のお坊さんのはずなのに、神様を信じているの? と思って活字を追ってみた。こんなエピソードが書いてあった。

稲盛さんは若いころから、毎朝洗面をする時に反省を行ってきたという。経営者として成功して稲盛さんに私淑する若手経営者の会「盛和塾」の塾長になっても、いっぱい飲んで帰った夜、寝ようとする時にも反省しているようだ。

その反省とは、「神様、ごめん」と口に出して言うことだという。ちょっと威張ったような偉そうなことを言った日など、家やホテルに戻ると、すぐ「神様、ごめん」が口をついて出ると言う。それが「神様、ありがとう」になる日もある。

なぜ「ありがとう」か。悪いことをしたと、気づかせてくれてありがとう、という意味の「ありがとう」なのだそうだ。

筆を進めて、「反省を繰り返し、常に心を純粋にしていなければ、すばらしい考え方、すばらしい人格、すばらしい人間性、そういうものを維持していくことは不可能です」「心を純粋にして、自分の行動を善の方向へ向けていくためにも、『反省』は欠かせないものなのです」と念を押す。

反省には、仕事や研究の推進の上での反省だけでなく、自分の人間性についてもしっかり反省するまなざしが必要だと強調している。

日めくり『稲盛和夫箴言集』と『京セラフィロソフィ』をリンクさせて読むと、ビジネス面での成長だけでなく人間的成長についても気づかせてもらえることが多い。

しかし気づくだけで実行しなければ「反省した」ことにはならない。一生懸命取り組むしかないのだということ。これも日めくりと本の読み比べの中から教わった。

上司が「たくさん儲(もう)けて、給料もたくさんとってほしい」と願って、部下に「開発も営業もがんばれ!」と檄(げき)を飛ばしても、たくさんいる社員の中には、「もっとたくさん給料はもらいたいけど、これ以上がんばれない」と思う人がいるかもしれません。中には、心の底で「がんばるよりは、のんびりゆったりしたい」と思う社員がいるかもしれません。

上司と部下の思いがてんでバラバラでは、会社・団体の理念は立派であっても、その理念は十分な力を発揮しないでしょう。

では、「がんばるよりは、のんびりゆったりしたい」と思う部下に、「たくさん儲けてたくさん給料をとってもらいたい」という上司の思いを分かってもらって、がんばってもらうにはどうしたらいいのでしょうか。

よくあるのは、「勤務評定」を飴(あめ)と鞭(むち)のように使って賃金や賞与に差をつけてノルマの達成を強制し、営業成績を向上させる方法です。しかしこれは、「昇進のチャンスだ。がんばろう」と前向きに取り組む部下には喜ばれますが、「いやいやさせられているのだから、ほどほどのところで十分だよ」と思っている部下の勤労意欲をさらに失わせることになりかねません。まして、高齢者介護や病弱な乳幼児を抱えた部下からは「がんばって働きたくてもがんばりきれないのに、何をいまさら」と反発を買いかねません。

そうした、「素直にがんばれない」思いや事情を抱えた部下が、心の底から「がんばって働きたい、一生懸命働きたい」という素直な気持ちになって働いてくれるようなそんな〝魔法〟はないのでしょうか。

実は、そんな魔法があるのです。その魔法の杖は、上司の声かけの姿勢そのものの中にあるのです。

上司のあなたにお尋ねします。あなたは、部下を激励するとき、心の中でひそかに「部下はがんばって当たり前」「家庭の事情を言うヤツは会社のお荷物だからやめてしまえ」「上司のワタシがこんなに部下のことを考えてるのに、何でわかってくれないんや」と思いながら「がんばってくれ」と言ってはいませんか。

たとえ言葉にしなくても上司のそうした思いは、表情やしぐさとなって部下に言葉以上に伝わってしまっているものです。これでは部下がそれぞれ持っている夢や願望、そして個別の事情をまったく無視したに近いものになってしまいます。

人間というものはやっかいなもので、自分の存在を無視されると、いくら相手がいいことを言ってくれていると分かっても、その人にはついていかないものです。自分の存在を認めてくれて、こちらの事情に思いやりを込めて接してくれる人のためならば、自分の事情や思いはひとまず脇に置いても、力を尽くしたくなるのが人間です。

これが、実に不思議な〝人間の心の働き〟です。人は、自分のことを大切に扱ってくれる人のために力を尽くすのです。その尽くす度合いが、上司の目から見て不十分であったとしても、人はそれぞれの困難な状況を工夫して、その人が出せる最善・最大の力を出そうとするものです。実に不思議な〝心の働き〟です。

上司の何が、部下のそうした〝心の働き〟を呼び覚ますのでしょうか。人間の心の底には、自分を信用して物事を任せてくれる人、自分をまっとうに評価してくれる人の恩には報いようという欲求が息づいて働いているからです。上司が部下を心から信頼し、温かく見守り導いていこうと温かなまなざしと言葉をむけるとき、部下は向上心や前向きに努力する気持ちをかき立てられるのです。

「営業実績を上げよう」と言う前に、「さまざまな事情と思いを抱えたこの部下と一緒になって、その思いと事情を受け入れて一緒に」という思いやりを込めて「営業実績を上げよう」と語りかけてください。部下の上司を見る目が変わります。上司と協力してやっていこうとする空気が部内に広がって行きます。

これは、うそでも夢物語でもありません。人間がだれしも脳の中に持っている「認められたい」という基本的な欲求が、部下の心を底の底から突き動かすので、この夢が現実となって立ち現れてくるのです。

営業実績向上の秘訣は、「叱咤激励」にあるのではありません。

部下一人一人の夢と個別な事情に上司が耳を傾け、笑顔で、それぞれの部下の夢をかなえよう、個別の事情を踏まえて十分に働ける機会をつくろうと努める上司の誠実な姿勢、部下を信用して心の底から部下の幸せを願い粉骨砕身努力する日々の生き方が、言葉を越えて部下の心を動かし、「この会社で働けてよかった」という思いに結晶して、社業の推進力を育てて、社業の発展につながっていくのです。

部下を信じ、部下の思いを伸ばし実現しようとする上司の姿勢こそが、部下の真心を活性化してスキルを向上させ、お客様を大切にする心をはぐくんで、会社を大きく豊かにしていくのです。部下が育つところには、会社の業績がついて向上していきます。

営業の数字が気にかかってしょうがない上司さん。部下の働きがい働く喜びを大切にして、部下の話に耳を傾けてください。上司の夢の押し付けではなく、上司と部下がともに語り合って夢の木を大きく多様に育ててください。

その実践はどうしたらいいのか。ボスが結論を部下に押し付けるボスマネジメントではない、部下の心の中の喜びを大切にしながら部下の夢の実現をリーダーがともに目指していく「チョイスクオリティマネジメント」が、様々な角度から実践方法を教えてくれます。

興味のある人は、アクセスしてみてください。経営推進と業績向上につながるさまざまなヒントと出合えることと思います。

http://empowers-ing.co.jp/cp-bin/wordpress/

ドキュメンタリー映画「日本一幸せな従業員をつくる!-ホテルアソシア名古屋ターミナルの挑戦」を見た。ホテルは名古屋駅前再開発ため平成22年9月末で36年の歴史を閉じた。映画は、ホテル最後の10年間を総支配人(GM)として勤務した柴田秋雄さんと、ホテルの正社員、嘱託社員、アルバイトたち総勢200人近い人の、閉店10日前の姿と、閉店当日の様子を映し出す。

映画の発端は、柴田総支配人(GM)という素敵な人がいると聞いて、映画スタッフ数人がことのついでに会いに行ったことから始まる。スタッフがたまたま柴田GMへのプレゼント用にと撮った映像の中で、柴田さんは従業員の自慢ばかりしながらホテルを案内して回る。コーヒーでもてなしながら話をする。社員食堂のごはんを一緒に食べ、本や書類がうずたかく詰まれたGMの席を案内して回る。

コーヒータイムでは、喫茶コーナーで接客する耳の聞こえない若い女性が、一人ひとりにカップを差し出した。喫茶では、お客さんの言葉がよく聞き取れない。時間がかかる。しかしスタッフはその女性が仕事をやりきるまで、待って、見守る。「障害があるからできなくて当たり前」のように言われ続けてきた女性は、自分が初めて一人前に扱ってもらえたと喜びスピーチをした。たどたどしい言葉。しかし表情にはあふれるばかりの喜びと自信が輝き出ていた。

試写の後、柴田さんは岩崎監督とのトークライブで、GMに就任した当初、社員食堂に入って、訪れる社員が少なかったことを話した。

食堂のまかない担当者に聞いた。社員がたくさん食べると経費がかかるからあまりおいしく作るなといわれているという。柴田さんは、まかない担当の3人に食堂委託会社を辞めてホテルの社員になってもらった。「あんたら食べ物作る職人だろうが。職人ならちゃんとした道具を使わにゃ」と、使っていた合成樹脂のまな板とステンレスの包丁に替えて、幅1メートル厚さ10センチほどのヒノキのまな板と、刃物で有名な岐阜県関市の1本10万円もする刺身包丁など数本をプレゼントした。おいしくなった食事に、訪れる従業員が増え社内コミュニケーションが活発になっていった。

失敗した社員を責めない。社員のいいところを上司に見つけ出してもらって月1回、柴田GMから「ありがとう賞」を贈る。社員の誕生会をして一緒に語り合い喜び合う。入社試験は自分がGMになってから筆記試験をしたことがない。30分の面接だけ。

うつ病になって心が壊れてしまった社員のために、農場の一角を借りて、土いじりをする。作物を育て、土に親しむ数ヵ月。何を言われてもうつむいて黙っていた社員が、すこし顔を上げ、手を振ってサインを出すようになる。柴田さんは「何も言えんかった子がこうして手を振る。もう、それで精いっぱいなんよ。それを、しっかり受け止めんと」と言葉に力を込めた。

名古屋のホテル業界で最高額のボーナスを出したときは、ほかのホテルに行って、自慢して来いと明るく励ました。頑張ったら報われる。従業員は働くことが楽しくなった。

4期連続赤字だったホテルは7期連続黒字となり、年間稼働率90数%も達成。お客さんから「日本にこんなあったかいホテルがあるなんて、まるで家族のように接してくれる」と喜ばれ、出入り業者からは「従業員さんがトマト運びを手伝ってくれて」と感激される。

この営業成績の好転を、柴田総支配人と従業員の頑張りとだけ見てはいけない。出入り業者、お客さんへの信用の蓄積と見るのも、まだ不十分だ。柴田さんの大きな願いに気づかなければいけない。

この平成の時代。障がい者を差別し、従業員を使い捨てにする社会へのアンチテーゼとして、柴田GMは「人と大切にし、人が喜び、人の真心が人に響いて従業員も家族もお客様もココに来てよかった、ココで働いてよかった、ココに納品してよかったと心から喜べるコミュニテリーをつくりたい。未来への希望のタネをまきたい」と願ったのではないか。

それを、弁舌ではなく、笑顔と真心からの実践として日々目の前で見せていったのではないか。

生き苦しい世の中。しかし、人間が真心を尽くして一生懸命生き、笑顔いっぱいに工夫をこらすとき、笑顔と工夫をこらす人々の輪が生まれ、響き合って、人も自分も喜べる世界が生まれてくる。

このホテルの日々を「私たちの学校です」と振り返った従業員がいた。柴田GMは閉店前夜、全従業員一人一人に「卒業証書」を手渡した。最後の一人に渡して降壇する柴田GM。そこに「もう一人卒業生がおります」のアナウンス。柴田GMは呼び止められる。全従業員から、真心の渦を作り出したGM(総支配人)への感謝の「卒業証書」が手渡された。

この真心あふれる映画、様々な地域で、この映画に感動した人たちの手で自主上映会が開催される。

http://www.heartofmiracle.net/hotnews/hotnews0012013.html

多くの人が映画と柴田秋雄さんからたくさんの元気をもらい、生き苦しい世の中を明るく笑顔のあふれる職場、家庭、学校、サークルにすることが願われている。

米国にウィリアム・グラッサー博士(1925-2013)という精神科医がいました。精神病院で治療して、年に2人だった退院患者数を、薬を使わずに、年間200人にまで高めて全米の注目を集めました。

グラッサー博士は、患者たちに、しあわせのタネを見つける自信と技術をプレゼントしたのです。それはどのような技法なのか。

まず、過去は一切問題にしないことです。

過去は変えることができません。しかし、今と未来は変えることができます。

なりたい自分になる道はいつも開かれているのです。希望や夢を描き、夢を実現するために、今、あなたができることは何だろう。患者がイメージしやすいよう、グラッサー博士は患者自身の選択を尊重し続けます。自然と患者は「大切な人たちとなかよくしながら、自分の願いも大切にする手法」に気づいていきました。

この手法が有効なのは、精神病院だけではありません。

一般の家庭、職場、学校でも非常に有効なことを、グラッサー博士は見つけました。理由は簡単です。さまざまな精神症状が、自分と自分、自分と他人との人間関係のストレスから起こることが多いからです。そうしたストレスは人間誰しも抱えている課題だからです。

「あなたはどうなったらしあわせですか」「そうなるにはどうしたらいいのでしょう」「今のままでそうなれますか」「どうしたらいいのでしょう」「3歩進んで2歩後退してもいいのです」「相手を変えようと思わないで、あなただけでもできることは何かありませんか」「あきらめたらそのままですよ、しあわせになりたいのでしょ。ではしあわせになるために何からはじめましょうか」

ストレスの高い夫婦、職場の上司と部下、学校の教師と生徒に、この理論を元として自分の夢がかなう道を選択してもらったところ、著しい改善が起こったのです。

自分がつくるしあわせ未来予想図。1歩は2歩になり、やがて自信に満ちた足取りとなってしあわせのタネを大きく育てます。

それは、自分が選んでつくる自分の未来だからです。人から命令されたり、外部からのプレッシャーでいやいや進む道ではありません。多くの人がなりたい自分を取り戻し、生き生きとした人生を取り戻しました。グラッサー博士はこの手法を「選択理論心理学」と呼んで世界中に広めました。

従業員に不満がある社長さん、部長さん、会社の仕事が面白くない従業員のみなさん、子どもに不満なお父さんお母さん、学校や家が面白くない子どもさん、生徒の指導で行き詰まっている先生。

状況や相手を変えることが出来なくても、あなたがあなたを変えることで、状況と相手があなたのしあわせのタネに変わっていくのです。

すべてはあなたの【選択】次第です。

今は対応できていなくても、あなたがハードルを越えたいと思うのなら話は簡単です。とても小さな1歩を踏み出しさえしたらいいのです。1歩は10歩、100歩、1000歩につながります。

相手がこう変わってくれたらとひそかに願っているあなた。では、相手があなたにどう変わってほしいと思っているか、考えたみたことはありますか。ちょっと視点を変えて、そこからあなたが本心からなりたい自分の姿をイメージしてみてください。家庭や職場や学校に転がっていたたくさんのぐちのタネが、実はしあわせのタネだったと発見し、実感できる日がくると思います。

ぐちのタネにするか、しあわせのタネにするか。それは、あなたが選んで決めることです。どちらのタネを選びたいですか。

職場のメンバーが、社長が、管理職が、従業員がしあわせのタネを選ぶとき、職場の力は100倍、いや、それ以上になるでしょう。会社の力、営業力、そして従業員の喜びも100倍以上になっていることでしょう。

人は喜びをもって働くとき、接するとき、大きな力を発揮します。そうした人の組織が大きな力を出すのは宇宙の摂理でもあるのです。

「父の日に、妻の父親のところへ行ってプレゼントを渡したのですが、そのとき自分の親のことを思って、自分もお父さんとお母さんから命をもらったのだ、ということを改めて意識しました」

「両親に感謝するだけでなく、日ごろから職場の人や、家族、周りの人に感謝できるようにならなければなぁ」

月曜の朝、こんな会話が京都の町の中心部、鉾町にあるビルの6階で弾みました。

なんでか。

朝礼で社長と社員とパートの3人が「両親への手紙」という文章を輪読したからです。

 

文章は、月刊誌「職場の教養」(社団法人倫理研究所発行)の日替わりエッセーです。内容は、中学生の頃から素行の悪かった子が工業高校を卒業し、他県へ就職する出立の朝に両親へ手紙を渡しました。「本当にお父さんとお母さんの子どもに生まれてよかったと思っています。ありがとう」などと書かれていました。読んだ母親は涙があふれ、自分自身が一度も両親に「父と母の子供に生まれてよかった」と言ってはいなかったことに気付きます。そして両親に手紙を書きました、といったことです。

出来すぎの道徳訓話のようにも聞こえますが、あながちそうとばかりも言えません。

「感謝の心」というのは不思議なものです。「ありがとう」の心は、素朴で純粋で、小さな子どもから高齢者まで、みんなに伝わる心です。そして国や人種を超えて、人を明るく励まします。

仏教は「山川草木悉皆仏性(さんせん・そうもく・しっかい・ぶっしょう)」と教えます。ものみなに仏性が宿っているということです。「人はみな神から分け御霊(みたま)、神心(かみごころ)をいただいている」と教える宗教もあります。

「ありがとう」は、この仏性や神心に通う、人間みなが心の奥に持っている貴重な宝物かもしれません。その宝の入った「両親への手紙」が、3人の仏性や神心に響いた朝でした。その事務所は、「人も組織も幸せ」をモットーに仕事に励んでいるそうです。

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